eラーニング専門家資格から広がる世界 「eラーニングプロフェショナル資格」取得者インタビュー Vol.4

このコーナーでは、eラーニングプロフェッショナル資格(eLP資格)を取得された方が、どのような活躍をされているかをご紹介いたします。

資格取得者プロフィール

山本文枝氏

山本 文枝

取得資格:マネージャー、エキスパート、コンテンツクリエイター、ラーニングデザイナー

・ソニーデジタルネットワークアプリケーションズ株式会社 UI・UX デザイナー/HCD-Net認定 人間中心設計専門家
・東京家政大学 造形表現学科 メディア・情報デザイン研究室 非常勤講師
・熊本大学大学院 社会文化科学教育部 教授システム学 博士後期課程
・熊本大学 教授システム学研究センター 連携研究員

前職のNECグループにて公式サイトやシステム画面のビジュアルデザイン、アートディレクション等を担当しながらeラーニングコンテンツ制作やLMSのUI改善、チーム内教育等を担当。現在担当する業務では、グローバル製品のUI/UXと教育支援を担当。

学習者を「ユーザー」と捉え、ものづくりの感動価値を教育で支える

担当する業務で世界シェアを誇るグローバル製品のUI/UX(ユーザーインターフェイス/ユーザーエクスペリエンス)を担当する山本文枝さんは、その一方で教育支援もサポートする。大きな組織の教育を下支えする山本さんへ、資格がどのように役立ったか伺った。

保有しているeLP(eラーニングプロフェッショナル)資格を教えてください。

eLPの資格については、マネージャー、エキスパート、コンテンツクリエイター、ラーニングデザイナーを熊本大学大学院の教授システム学専攻で取得しました。

なぜ、資格を取得したのですか?

20代は「経験と勘と度胸」で教育支援を行ってきましたが、今一つ自信がありませんでした。授業や研修を体系立てたり、求められていることに応じる形で設計したり、出口を確認したり・・・。そういうことを学びたい気持ちがありました。

資格は役立ちましたか?

現在担当する業務で人間中心設計(HCD=human centered design)初学者及び中級者を対象としてオンライン研修の開発・運営を行なっています。
人間中心設計は、その名の通り人を中心にサービスや製品やWEBサイトを設計していきます。人間中心設計の「人間」は「ユーザー」に置き換えてもらっていいと思います。日本だけでなく海外でも、多くの製品開発をしている企業でユーザー中心の考え方が導入されています。

担当する業務ではこの設計手法をベースにして製品開発をしています。ユーザーの声をしっかり聞き、ユーザーテストを国内外で行ない、たくさんのプロトタイプを作り、何度も何度も改善して、ようやく製品化していく、ということを繰り返しています。PDCAサイクルの中にユーザーも入っているような設計です。人間中心設計のスキルを持つ社員を育成するため、必要な知識の習得やスキル向上の支援を体系立てて学べるように設計しています。
もともと集合研修だったものがコロナ禍もあり、すべてオンライン化されたことで大きく変化しました。その際に熊本大学院での学びが非常に活きました。

また、仕事の傍ら、特定⾮営利活動法⼈⼈間中⼼設計推進機構(HCD-Net) の講師拡⼤ワーキング・グループメンバー(2019年4⽉~)としてHCD ⼊⾨講座教材を開発・評価をおこなっていました。実業務だけでなく学会活動においても、学んだ内容を活かすことができています。

オンライン研修で気をつけられたことは?

担当する研修は2020年からコロナ禍の影響によりオンライン研修になりました。そこで、今まで集合研修でやってきたことを、詳細な研修の計画にまとめ、オンライン化していきました。
人間中心設計の分析は、フレームに沿って可視化する手法が多くあります。たとえば、ユーザーの気持ちを知るために、課題やアイデアを一つ一つの発話に振り分けながら、付箋に書き出していき、それを階層に分け、真の価値はなにか? 価値分析をやっていきます。対面ではなくオンラインだと付箋に代わるツールも大切です。チームメンバーとツール選定一つに対してもさまざまな模索を繰り返しました。

また、オンライン研修になると、講師とチームファシリテーターの連携が難しくなるという課題がありました。そこでチームファシリテーターの底上げをするため、『チームファシリテーターの育成』『オブザーバーの育成』という手引書を作り、ルール化しました。「集合研修ではチームファシリテーターはこうやっていましたが、オンラインではこういう風に介入してください」、「こういう形でみなさんをまとめてください」と文書化しました。初めてオンラインで学ぶ方が非常に多いので、受講生を迷子にならずにゴールに導いていくためです。

社内での評価はいかがですか?

社員のスキルの底上げや、スキルの伝達は、どこの組織にとっても最重要課題です。
たとえば前職では、会社を退職されていく方の知識は暗黙知になっていることが多く、なんとかその知識を体系化して、在籍する社員の方に伝えて、より良い製品を生み出していって欲しい、という課題がありました。そこでLMSを活用した専門職育成の教育システムを導入し、それを実現することになり、非常にありがたい、と言われました。

これから資格を取得される方へ何かアドバイスはありますか?

私は自分の専門であるUI/UXや人間中心設計を主業務としていますが、ありがたいことに実務で研修を担当でき、大学で教えながらLMSを活用し授業を設計する仕事に就いています。
しかしながら、実業務でなくとも学びの場は身近にあると考えています。例えば、資格で学んだことは、仲間とのインフォーマルな学びでも活用できると思います。現職場では、課ごとにチームを作りながらインフォーマルな学びを行なっています。

これからの目標はありますか?

人間中心設計は、「ユーザー」を中心に考えますが、オンライン学習は、「受講生」を中心に考えるという意味では対象とするものがある点でアプローチは近いものだと思っています。
学習者を「ユーザー」と捉え、意欲的に効率・効果的に楽しく学ぶ「戦略」を立てることが、学習を中心に設計するプロフェッショナルの腕の見せどころと考えていますので、これからも日々精進したいと考えています。

(文献:菊野 ひとし

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