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eラーニング専門家資格から広がる世界 「eラーニングプロフェショナル資格」取得者インタビュー Vol.1
このコーナーでは、eラーニングプロフェッショナル資格(eLP資格)を取得された方が、どのような活躍をされているかをご紹介いたします。
資格取得者プロフィール
千葉 佑介 氏
取得資格:『eLPプロフェッショナル』資格 「エキスパート」
テクニウム株式会社 副参事・デジタルアカデミーPJプロジェクト責任者。大手IT企業在職中、熊本大学大学院にて教授システム学を専攻。eラーニングプロフェショナル資格者。
同社は、世界最大手の工作機械メーカーDMG森精機株式会社と、堅牢なIT技術を有する株式会社野村総合研究所の共同出資により2018年にスタート。顧客向けポータルサイト「my DMG MORI」を中心に、デジタル技術を用いた教育・EC・顧客サポートなど、デジタルサービス全般を担う。
eラーニングプロフェショナルの資格者である千葉佑介氏は、当初、自身も含め2人のスタッフで工作機械のeラーニングビジネス立ち上げに臨む。工作機械は「機械を生み出すための機械」と言われ、日本の製造業の競争力を支える業界だ。
その世界最大手のDMG森精機株式会社が、工作機械を購入したお客様、自社の若手スタッフへ初のeラーニング導入を実施する。そのプロジェクト責任者を千葉氏は担う。サービスインまでの期間は1年に満たない。しかし資格取得のプロセスで得た知見を活かし、開発は見事に成功。今では教育だけに留まらないビジネスへの広がりも見据えている。
- 現在、eLC(日本イーラーニングコンソシアム)で取得している資格を教えてください。
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エキスパート資格です。
- 今回、はじめてのeラーニングサービス開始にプロジェクトマネージャとして従事された訳ですが、1年に満たない中で行われたのは大変でしたか?
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正確には導入まで8か月も無かったと思います。LMS(学習管理システム)はどれを選択するかというベンダー選びから、それを使いやすいようにカスタマイズし、さらにコンテンツを制作するなど、下準備からのスタートだったのでなかなか大変でした。
- タイトなスケジュールの中で資格は役立ちましたか?
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新しいモノやコトをつくるときにはそもそも、「どういう順番でつくったらうまくいくのか?」、「どういう役割分担で何をやると良いものができるのか?」ということから分からなくなりがちです。
そこで今回は、資格取得を通して学んだ「ADDIE」(Analysis[分析] 、Design[設計]、Development[開発]、Implementation[実施]・Evaluation[評価]の頭文字をとったもの)という教育工学の開発モデルを参考にして企画を進めました。それにより、各工程の目的とタスク、成果物を予め定義し進めることができました。一方、いきなり工程定義をやりすぎると今度は開発がなかなか進まないので、視覚的に分かるプロトタイプを作成するところから始めました。
- 実際にコンテンツを作られるときに注意された点はありますか?
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いきなり細かい説明に入ると受講する側も疲れてしまうので、最初に「この章では何を、何故、どのように学んでもらうのか?」、「これができるようになると、こんなにいいことがある!」という動機付けのイントロダクションからスタートしています。
その上で、実際のモノや動きを見ないと分からない部分は講義動画を見てもらい、小テストで確認するという流れです。動画、図解、アニメーションも豊富に入れ、全編フルナレーションにすることで工作機械の操作が初めての方でも分かりやすくできるように作りました。もちろん、DMG森精機アカデミーで長年培われてきた対面研修のノウハウも大いに生きています。
- 講義動画などを作られるとき機械加工技術者の知見も必要だと思いますが、どういった点に気をつけてコンテンツを制作されましたか?
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一つ一つの学習課題について、学習すべきものを技術者が課題マップに落とし、「この内容で受講生に届くか?」「必要な項目を網羅しているか?」「教え方と学習課題が合っているか?」を私たちがレビューするという役割分担で進めていきました。私は教育工学とeラーニングのプロですが、工作機械操作や機械加工の中身についての本当のところは技術者にしか分かりません。餅は餅屋、ですね。
- それを評価するテスト問題もとても考えられたものですね?
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学習課題の目的を明確にして、「覚える」、「関連付ける」、「できるようになる」、「適切にふるまえる」など、課題内容と必達度に応じた多種多様なテスト問題を用意しました。
たとえば、「覚える」テスト問題について鉄棒運動を例に挙げますと、「鉄棒というものが何か説明できる」などのように定義を記憶するだけであれば2択、3択形式でも問題ありません。ただ、2つ3つ似たような選択肢が混じったときに混同しないかや、関係性を理解しているかなどのいわゆる応用力を問いたい場合は、多岐選択にするというように、より正確な理解度を確認する出題形式とすることを考えました。
同様に「関連付ける」学習課題を鉄棒運動で例えると、「鉄棒を握って、登って、足を上げて、ぐるっと回って着地する」というやりかたを一つ一つ理解していないとそもそも運動はできません。そのような問いに対しては選択肢から正解を選ぶのではなく、順番を並べ替える形式やマッチングのようなより難しいテスト形式で出題するなど、その課題が達成できているかどうかを問題へ落とし込むアプローチを取りました。
- 説得力があるテスト問題の作り方ですね。
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eラーニングはどこまで行っても自己学習ですので、モチベーションを喚起し、達成感を定期的に得ながら学習し続ける仕組み作りが大切だと思います。インストラクショナルデザインの理論や過去の研究結果を応用することで、eラーニングに不慣れな工作機械業界のお客様がなるべく学習継続しやすくなるよう知恵を絞ったつもりです。
- 2020年6月に対面研修から座学をeラーニングへ移行されていますが、お客様の声はいかがですか?
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工作機械を購入されたお客様は、以前はDMG森精機の三重県・伊賀事業所で5泊6日の研修を行っていましたが、座学部分をeラーニング化したことで2泊3日となり、お客様の業務負担を最小限に抑えることができました。
受講者からは「事前に学習してから研修が受けられる」、「実習に比重がかけられるのが嬉しい」という声や、「動画なので見直し早送りができ、場所を選ばず空き時間で学べ、先輩に聞きづらかったことも独自で調べられるので助かる」、「不明な点は電話やメールですぐに質問できるので、業務に支障なく教育ができる」などというお声をいただいています。また、eラーニング単体で学習を完結されるお客様も思ったより多く、驚いております。
- 電話での問い合わせも可能なのですね?
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工作機械を導入されたお客様の工場では、「スマホが無い」、「eラーニングって何?」という方も一定数いらっしゃいます。そういう方々にも分かりやすい環境を整えたい、ということで電話サポートも行っています。
このようにデジタルだけに頼るのではなく、アナログな仕掛けもご用意することが業界内での普及には不可欠だと考えています。他にも現場で見られる印刷版テキストや、学校教育内での活用を想定し、グループで集まって理解度を深める際に活用しやすいDVDなども用意しています。
- 考えられた設計とコンテンツ作り、そしてお客さまへの配慮など、まさにお手本になるeラーニングのケースだと思いますが、これからeラーニングに取り組まれる方へ何かアドバイスはありますか?
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eラーニング自体は海外でも国内でもかなり普及しきっていると思いますが、パワーポイントを変換しただけのものや、動画を撮って掲載しただけ、という手段が目的化したようなものもあふれています。そうならないためには、面倒でもインストラクショナルデザインやeラーニングプロフェッショナル資格で学べる基本に立ち返り、一つ一つ丁寧に工程を進めていくのが大切だと考えています。
- 当初2名で始められたスタッフは現在、9名になったということですが、チームメンバーの皆さんにも資格で学んだことは教えられていますか?
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部下には順次『eLPベーシック』の講座を受講してもらっています。学生インターンも多く活躍してくれておりますので、eラーニングのイロハの勉強という意味だけではなく、業務の擬似体験という意味でも役立っているようです。私自身もそうですが、資格を取得することが目的というよりも、資格取得するためのプロセスで学んだことを業務に活かすのが大事なことだと思います。
- 今後、現在のeラーニングをどう展開されようと考えていますか?
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サービスリリースしてから1年間で、のべ400名のお客様と、DMG森精機の若手社員200名がeラーニングを受講してくれました。現在はその学習ログをベースにして、より受講しやすいeラーニングにするための分析に注力しており、改版および次期シリーズの企画を鋭意進めています。
また、単に人材育成や教育研修の支援という文脈のみでなく、DMG森精機のビジネスに直結させる企画も検討しています。たとえば、お客さまへ出荷する工作機械にeラーニング教材をセットでご提供し、マニュアルとして使ってもらうなど、ビジネスプロセス上必然性のあることをeラーニング化していきたいと考えています。
今後も「工作機械業界の学びをデジタルでもっと身近に」をモットーにビジネス拡大にチャレンジして参ります。
(文献:菊野 ひとし)
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