2007/04/04 

日本郵政公社郵政大学校

日本郵政公社郵政大学校様でのeラーニングの取り組み

去る3月15日(木)に日本イーラーニングコンソシアム(eLC)の月例カンファレンスにて、日本郵政公社郵政大学校副校長の村越直政様より「郵政大学校でのeラーニング導入」について、導入の背景や苦労なさった点を中心にお話いただきました。
詳細につきましては、当日発表資料(PDF)をご参照願います。

開催日: 2007 年3月15日
場 所: 東京八重洲ホール
発表者: 日本郵政公社 郵政大学校
     副校長 村越直政様
参加者: eLC会員約30名

概 要

1)研修のねらい

平成19年10月の郵政民営化に向けて様々な経営革新が続く中、現場の郵便局幹部および役職者のマネジメント能力の向上が大きな課題の一つとなっていま す。今まで郵便、貯金、保険等の各分野において専門スキルを発揮していた職員が、郵便局の局長に昇任すると同時に、それら3事業を包括してバランス良くマ ネジメントできるよう、昇任にあたり新たに膨大な知識を習得する必要があるからです。
今回紹介する「郵便局eラーニング講座」は、そうした郵便局のマネジメントに必要となる業務知識の基本を体系的に学習し、現場で起こる様々な問題に対して適切かつ迅速な意思決定ができるようになることを目的に開発されました。

2)膨大な量の知識をeラーニングで効率よく学習

本講座の学習内容を紙のテキストで作成すると、役職者用で514ページ、管理者用で671ページになったそうです。従って、集合研修ではとても消化しきれ ません。また、分厚いテキストをだけ配布しても、どこに何が書いてあるか分からず、それだけで学習意欲が減退してしまいます。
そこで、効率的な学習を可能とするため、eラーニング化に着手し、知識体系の「見える化」と、自分の理解度を確認できる「テスト」を実現しました。

3)3年間の試行錯誤

第一回は平成16年度に実施しました。その際は、169名の修了者(修了率38%)に留まりました。この数字は提供側として決して満足できる数字ではな かったということです。そこで翌年は修了者増のためにCD-R教材を併用してeラーニングを提供したところ、1,056名の修了者(修了率86%)にアッ プしました。さらに平成19年度は、eラーニングコースのみで実施することとし、学習システムを全面リニューアルし、修了者3,653名(修了率83%) と一気に受講の拡大に成功しました。なお、この人数は業務として強制的に受講させたものでなく、すべて任意で勤務時間外に受講したものということですから 驚異的です。(資料p.1参照)。

4)学習者の期待と目指すべき機能

まず、学習者の分析をしたところ、今までの担当職務によって得意な分野に大きなバラツキがあったことが分かりました。熟知している分野もあれば、全く初め て学ぶ分野もあります。そこで、講座の仕様としては「得意なところから学習できる」、「知識の体系が見やすい「目次」で見える化」、「どの学習画面でも画 面の目次から読みたい章・節・項が自由に開ける」を心がけたそうです。さらに、
○「規定」等の関連する参考資料へのリンクの仕組みの実装
○学習の理解度や進捗状況の把握ができるよう、理解度確認テストを節単位で細かく実施
○コースレビューで自由に意見が書き込める
等の機能を実装したそうです。(資料p.2参照)。

5)開発時に苦労した点

5-1.仕様書づくりと入札
教材の中身については、それぞれ専門分野の人が執筆したとのことです。その原稿を学習しやすくするため、村越様は学習システムに盛り込むべき機能の仕様を 考える役割を担いました。仕様を確定するにあたっては、様々なeラーニングシステムを見て、それらの機能を一覧にし、なるべく多くのベンダーが入札できる よう、各社が共通で持っている機能を中心に仕様を作成したそうです。
しかし、こうした最適な学習システムかどうかの判断を、1人のユーザー担当者が行うには限界があり、どうしても仕様漏れが出てしまいます。村越様は入札当 時を振り返り、「仕様を準備する際に、受講者のニーズに適合しているかeラーニングの仕様をチェックするのに役立つ業界推奨ガイドブック(チェックリスト のようなもの)があればありがたかった」とお話になっていました。
5-2.機能とコンテンツのバランス
教材開発と学習機能設計が同時に進んでいたため、学習システムが出来上がってきた段階で、システムに合わせて教材原稿に手直しが必要になる場合がありま す。他方、教材に合わせて、学習機能の変更の必要もでてきます。しかし仕様変更すれば納期とコストがオーバーしてしまいます。そうしたジレンマの中、村越 様は、教材執筆者と外部システム開発委託先の板ばさみとなって色々なご苦労をされたそうです(資料p.3参照)。「開発においては、教材の中身を考える 人、学習システムの基本仕様を設計する人の他に、受講者の使い勝手をよくするために教材とシステムの両方の改善をアドバイスできる第三のグループが必要」 とお話になっていたのが印象的でした。

6)運用後の声

6-1.ID、パスワードの変更
受講者からの要望として、「最初にもらったメールを毎回ログイン前に開き、IDとPWを入力するのが苦痛」。自分が覚えやすいIDやパスワードに変更できるようにして欲しいという声が多かったそうです。
6-2.メンテナンス時間
朝の5:30~6:30をシステムメンテナンス時間に設定していたところ、意外にも、その時間に勉強したいという声が多かったそうです。今回のeラーニン グ講座は、就業時間中に学習できない決まりだったため、その時間にメンテナンスすればよいではないかということだそうです。始まってみないとなかなか分か らない受講者のニーズです。
6-3.受講者の評価
結果として、修了した受講者からは5300センテンスものコースレビューの意見が集まったそうです。本コースへの期待の高さがうかがえる反応です。上記の ような要望もありましたが、概ね受講者からの感想は良好だったようです(資料4参照)。しかし、コースレビューはログインでき、実際に修了できた人しか回 答していないので、実際にはシステムへの不満が隠れているとお話になっていました。

7)まとめ

ユーザーとしての本音の意見が聞けた大変素晴らしい発表でした。組織の中と外の間で板ばさみになり、参考となるようなガイドブック等もなく、まさに試行錯 誤でeラーニングを推進しなくてはならない教育担当者としてのご苦労を実感することができました

(文責:活用事例委員会副委員長 古賀暁彦)

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