第24回 上流から見たeラーニング 6 「新しい世代 ”ジェネレーションY” を生かすには? 後編」

2008/12/03

3.eラーニングにおけるジェネレーションYの影響

では、このように多くのアメリカの企業の人材育成方法を変えようとしているジェネレーションYは、企業におけるeラーニングの世界においては、どのような影響を与えているのであろうか?まず、eラーニングの動きについてのアメリカにおける最近の調査結果をご紹介し、そこでのジェネレーションYの影響について触れたいと思う。


高成長企業における教育面での共通点

Bersin&Associates社(www.bersin.com 詳細は click here )は今年の7月に「高成長企業におけるeラーニングのビジネスへの貢献」という研究レポートを発表した。

研究の目的:
  • 「高成長企業が使っているラーニング・テクノロジーとは?」
  • 「ビジネスの課題にラーニング・テクノロジーがどう活かされているか? どのようなビジネスの課題が一番チャレンジか?」
  • 「企業の成長に対応するのに、教育部のトップはどのようなeラーニングを実践することが大事だと考えているか?」
  • 「高成長企業では、他にどのようなことに投資をしているか?その動向は?」

事例企業:CGI, Kohls, Apotex, Global Engineering Services, Zaxby’s社等

「高成長企業」の定義:過去三年間、継続して年間収益と社員の増加率が10%以上の企業

研究結果のキーポイント:
  • 高成長企業は、他の企業と比較するとeラーニングの利用度が高い
  • 高成長企業はリーダーシップ育成、専門家の育成を投資のトップにしている
  • 教育部の体制と施策はビジネスゴールに沿っている
  • Eラーニングの発展段階において、高成長企業は各段階を通して学んだベストプラクティスを活用しながら、次の段階に進んでいる


オンデマンド・ラーニング段階へのシフト
研究レポートでは、eラーニング発展段階を次のように大別している。
1段階 スタート:コンテンツ(既成製品、汎用製品)をオンライン化
2段階 拡張:ブレンディド・プログラム、ラピッド・ラーニング、より優れたコンテンツを外部に委託
3段階 統括と整合:LMS、コンピテンシー・ベース、パーフォーマンス・マネージメント
4段階 オンデマンド(※):LCMS,パーフォーマンス・サポート、検索、ポッドキャスティング

調査結果によると、この調査に参加した高成長企業はすべて4段階に入っている。しかし、オンデマンド・ラーニングの状況はどの企業もまだ早熟期で、調査に参加した企業の3分の2は不満足という回答を出している。それでも、これらの企業はすべて、今後この4段階をより進めていくという。その理由としてビジネスのニーズとジェネレーションYの増加をあげている。CGI社、Kohls社、Zaxby’s社の教育トップはそろって「若い層の増加」を今後の大きな課題としてとらえており、オンデマンド・ラーニングへの需要は益々高まるという。その理由として、「若い層はオンデマンドのメンタリティーがある」から、オンデマンド・ラーニングへシフトせざるをえないという。

※オンデマンドラーニング:
学びたいことを必要なときに(待つことなく)学びたいところで学ぶという学び方。例えば、書類を読んでいてわからないことがあったときに検索ツールを使って解答を探す、テクニシャンが業務プロセスについて疑問を感じとき、そのプロセスを明確にするためにプロセスの説明を自分のブラックベリーにダウンロードし確認しながら作業を続ける、製薬会社の営業社員が新しい製品内容についてある一部だけ知りたいときに、そのコンテンツのみダウンロードし5分ぐらいで学ぶ、自分の専門分野について面白いプレゼンテーションが会社であったが他の仕事があって参加できなかったので、後でそのプレゼンテーションをイントラネットからiPodにダウンロードし帰りの車の中で聞くというような学び方。


4.ジェネレーションYが好むラーニング

Bersin & Associates社の研究で、ジェネレーションYはオンデマンド・ラーニングを好むということが指摘されたように、ジェネレーションYは、「何かわからない」ことがあると、解答をすぐにほしがる。すぐに自分で検索エンジンを使って探そうとする。ましてや、この解答を探すのに、集合研修、あるいはWBT、CBTというコースウェアを受講するなんてことは、Y層の中にはない。

Y層を含めた米国のインフォメーション・ワーカーの仕事時間の6割以上は「検索」という活動に使われているといわれており「検索の効率性」は生産性向上の要因としてトップレベルになっている。Y層の増加とともに、「検索利用度」の割合も増加し、「社内における検索の効率性」が今、より問われている。

多くの米国企業は社内用検索ツールをもっていたが、「仕事で自分が必要としている情報がすぐにでてこない」、「探すのに時間がかかり過ぎる」等、不満の声のほうが多かった。結果として、グーグルを社内でも検索ツールとして利用している社員が多い。グーグルのデスクトップ検索は、これまでセキュリティーの問題が指摘されていたため、企業での導入が禁止されていたところも多かった。しかし、グーグルは社内用検索ツールを個人用とは別に開発したため、グーグルのデスクトップ検索を導入する企業が増えている。企業向けグーグル・デスクトップは、メール、ファイル、閲覧したWebページ、チャット等を検索できる。また、グーグルのサイドバーを使うと自分が欲しい情報(株価情報、天気、飛行機のフライト情報、その他)をタイムリーに見られる。社内にグーグル・デスクトップを導入することで、ユーザーの機能、好みを一括管理ができ、ユーザーすべてのデータを暗号化し、インデックスファイルを検索できる等の管理者側のメリットもある。

Bersin & Associates社が行った調査に参加した企業のほとんどは、スキルソフト社のオンライン・ブックスを導入している。それは、「自分の仕事に関連した情報だけを速く得たい」といった場合、情報量と質を絞り込んで検索できるからである。「オンライン・ブックス」は、スキルソフト社のeラーニングシステムのスキルポート上にカスタマイズ・コンテンツとして開発されたもので、「オンライン・ブックス」を使い一般書籍や技術書、マニュアルなどの実務情報を電子化し、Webで閲覧できる企業内電子図書館を構築している。社員は電子化されたそれらのドキュメント類を検索しオンラインで入手できるようにして、EPSS(Electronic Performance Support System 組織の仕事の効率やスピードの向上を支えるアプリケーションシステムのこと)を実現しオフィスの生産性を向上させているという。

さらに、ジェネレーションYの社員像としてiPodを耳に仕事をしている姿がよく滑稽に描かれているが、iPodなしでは生活できないジェネレーションYに影響されiPodを職場で使うことを許している企業が増えている。ある会社では、若手の営業社員が、職場でiPodを使って仕事をしたいといいだしたとき、上司は、営業業績が良好である限りは、使ってもいいという許可を出すというようなケースがあるように、iPodの職場での利用が増えるとともに、いつでもどこでも手軽に聴いて学習できるようにポッドキャスティングの利用が増えつつある。

また、ジェネレーションYは、型にはめられることを嫌うので、ブログやSNSは社内では使ってはいけないとされていても、全米では内緒で使っている社員が少なくないという。仲間同士で学ぶことに慣れているY層は、学びたいと思ったときに、上司に聞くより、チャット等のコミュニケーション・ツールを利用をしてコミュニティーで学ぼうとする傾向がある。セキュリティーが厳しくない社内での利用率の増加は、会社の規則で「いけない」ではとめられないので、何とかしなければと模索中の企業も多いという。

Bersin & Associates社のレポートにあるように、ビジネスゴールに沿って戦略的に新しいeラーニング用のテクノロジーを導入するのが理想であるが、こと新しいテクノロジーに関しては、いろいろとトップ側が戦略を出す前に、Y層が社内で使い始めてしまっているというのが現実のようである。

総論:
ジェネレーションYは、日本においても、米国においても「問題児」視されがちであるが、Yをうまく生かすことは企業の成長、競争力につながり、これから5年後の企業価値を左右する世代でもある。情報化社会に必要なインフォーメーション・ワーカーとして、今までの世代の中で一番高い素質をもっているのがジェネレーションYである。この意味でも、新入社員を今まで良かれとしていた社員像の型にはめて育てるのではなく、Y層の特性を理解し、特性を生かせるような育成の仕組みを検討すべきではないだろうか?

eLCメールマガジン購読者募集中

日本eラーニングコンソシアムでは、eラーニングに関するイベント、セミナー、技術情報などをメールマガジン(無料)で配信しております。メールアドレスを記入して『登録』ボタンを押してください。